新商品の情報を、自社サイトに掲載する。
そのあと、SNSに投稿する。
さらにネットショップにも登録する。
同じ情報を、媒体ごとに何度も入力していませんか。
この作業は、単純に時間がかかるだけではありません。
入力する場所が増えるほど、情報の食い違いも起こりやすくなります。
この記事では、情報を一箇所で管理し、そこからWebサイトやSNSなどの複数の媒体へ配信する考え方を解説します。
情報を何度も入力することが、問題の始まり
企業が情報を発信するとき、媒体ごとに管理画面が用意されていることが一般的です。
- 自社サイトはCMSの管理画面
- ネットショップはショップ側の管理画面
- SNSはそれぞれのアプリ
- Googleなどの外部サービスは、それぞれの管理画面
- 紙のチラシは担当者や制作会社へ依頼
それぞれが独立しているため、情報を追加・変更するたびに、複数の場所で同じ作業を繰り返すことになります。
例えば、商品の価格を変更したとします。
自社サイト、ネットショップ、SNS、その他の掲載先を一つずつ確認して更新しなければなりません。
更新する場所が増えるほど、「どこまで変更したか」を管理すること自体が仕事になってしまいます。
情報が分散すると何が起きるのか
2-1. 情報の食い違いが起きる
自社サイトでは新しい価格になっているのに、ネットショップでは古い価格のまま。
営業時間を変更したのに、別の媒体には以前の営業時間が残っている。
このような情報の食い違いは、利用者の混乱につながります。
「Webサイトには18時までと書いてあったのに、実際には17時で閉まっていた」
こうした体験が続けば、企業や店舗への信頼にも影響します。
2-2. 更新そのものが後回しになる
5箇所を更新しなければならないと分かっていると、更新作業そのものが負担になります。
その結果、「あとでやろう」と後回しになり、古い情報が残ってしまいます。
本来なら積極的に発信したい情報まで、更新作業の負担によって止まってしまうことがあります。
2-3. 運用が属人化する
「この情報はこの管理画面から更新する」
「この媒体だけは別の担当者が更新する」
このような状態が続くと、特定の担当者しか更新できなくなります。
担当者が休んだり退職したりすると、どこを更新すればいいのか分からなくなることもあります。
2-4. 情報の整合性を保つことが難しくなる
Webサイトだけでなく、検索エンジンや各種サービス、AIなど、企業情報を参照する場所は増えています。
そのため、媒体ごとに異なる情報を管理するのではなく、「正しい情報はどこにあるのか」を企業側で明確にしておくことが重要になります。
解決の基本は「入力する場所を一つにする」
ここで発想を変えます。
それぞれの媒体に情報を入力するのではなく、情報を一箇所で管理し、必要な媒体へ配信する形にします。
例えば、商品情報を次のように管理します。
- 商品名
- 価格
- 商品説明
- 画像
- カテゴリ
- 公開状態
この情報を一度登録します。
その情報を、自社サイト、ネットショップ、関連サイトなど、それぞれの媒体が必要とする形式に変換して配信します。
人が媒体ごとに入力するのではなく、システムに情報を配ってもらうわけです。
情報を一箇所で管理する仕組みについては、CMSとは?初心者向けに仕組みとWordPress・Drupalの違いを解説で基礎から説明しています。
APIは「情報を届けるための窓口」
ここで登場するのがAPIです。
APIは、システム同士が情報をやり取りするための窓口です。
難しく考える必要はありません。
情報を持っているシステムが、
「この場所に問い合わせれば、決められた形式で情報を返します」
という窓口を用意します。
受け取る側のシステムは、その窓口から必要な情報を取得します。
人が管理画面を開いてコピー&ペーストする代わりに、システム同士が情報を受け渡すという考え方です。
ただし、ここで重要なのは、APIそのものが情報を一元管理するわけではないということです。
情報を一元管理する仕組みと、その情報を外部へ届ける仕組みは分けて考える必要があります。
当社では実際にどう使っているのか?
当社でも、情報を一箇所で管理し、複数の場所へ配信する仕組みを運用しています。
例えば、お知らせを1件登録すると、次のような処理が行われます。
- 自社サイトのお知らせページへ反映
- トップページの新着情報へ反映
- 関連ページの新着情報へ反映
- 別ドメインで運営している関連サイトへ配信
管理画面で情報を登録する操作は1回です。
その情報を必要な場所へ届ける処理は、システム側で行います。
ここに「情報を一元管理する」ことの大きな意味があります。
情報を一元管理するメリット
6-1. 入力作業を減らせる
同じ情報を複数の管理画面へ入力する必要がなくなります。
例えば5箇所に同じ情報を入力していた場合、それを1回の入力にまとめられます。
入力作業そのものだけでなく、入力漏れを確認する時間も減らせます。
6-2. 情報の食い違いを防ぎやすい
元になる情報を一つにすることで、「どれが正しい情報なのか分からない」という状態を防ぎやすくなります。
価格や営業時間などを変更した場合も、元データを更新するだけです。
6-3. 媒体が増えても運用を拡張しやすい
新しいWebサイトやサービスを追加した場合でも、既存の情報を利用できれば、最初から情報を入力し直す必要がありません。
情報を一度整備しておけば、別の用途へ再利用できます。
6-4. 構造化データにも利用できる
一元管理した情報は、人が読む文章だけでなく、機械が扱いやすいデータとして利用できます。
当社では、Webページの内容に合わせて構造化データ(JSON-LD)も生成しています。
例えば会社情報を一箇所で管理しておけば、Webページに表示する会社情報と、検索エンジンなどが読み取る構造化データで、同じ元データを利用できます。
人間向けの情報と機械向けの情報を別々に管理しないことがポイントです。
構造化データの具体的な実装方法は、構造化データでサイト全体をつなぐ|DrupalでJSON-LDを実装した方法と考え方にまとめています。
6-5. 担当者が変わっても運用しやすい
媒体ごとに異なる更新方法を覚えるのではなく、基本となる管理画面を一つにまとめられます。
担当者が変わった場合も、覚える操作を減らせます。
6-6. 情報を資産として蓄積できる
各媒体に入力した情報がバラバラに存在していると、その情報を別の用途で利用しようとしたときに、もう一度整理する必要があります。
一方、最初から構造化された状態で情報を管理していれば、将来的に別のWebサイトやアプリ、サービスなどへ利用できる可能性があります。
情報を「その場で使うもの」ではなく、「何度でも利用できるデータ」として扱うわけです。
AI時代には「情報の一貫性」も重要になる
これからのWebでは、人間だけが情報を読むわけではありません。
検索エンジンや各種クローラー、AIなど、機械がWeb上の情報を取得して利用する場面も増えています。
だからこそ、企業が発信する情報についても、「何が正しい情報なのか」を一貫して管理することが重要になります。
ただし、情報を一元管理したからといって、検索順位が上がったり、AIに必ず引用されたりするわけではありません。
一元管理のメリットは、あくまで情報の整合性を保ち、必要な場所へ正確に届けやすい状態を作れることです。
検索エンジンが企業情報をどう扱うかについては、Google検索に会社のSNS投稿が表示された理由|WebサイトとSNSをつなぐエンティティ設計で書いています。
いきなり全部を連携する必要はない
情報配信の仕組みを作るからといって、最初からすべての媒体を連携する必要はありません。
当社が考える基本的な進め方は次のとおりです。
- 情報を整理する
どんな情報を管理するのか、項目を決めます。 - 情報を一箇所で管理する
管理画面から登録・更新できる状態を作ります。 - 主要なWebサイトへ配信する
まずは自社サイトなど、効果の大きい場所から連携します。 - 必要な媒体へ広げる
SNSや関連サイトなど、必要に応じて配信先を増やします。
特に重要なのが、最初の「情報を整理する」作業です。
ここを曖昧にしたままシステムを作ると、後から項目を追加したり、仕組みを作り直したりすることになります。
APIを作ることより、その前に「どんな情報を、どのように管理するか」を決めることの方が重要です。
デメリットもあります
情報の一元管理は便利ですが、すべての企業に必要なわけではありません。
- 最初の設計に時間がかかる
どんな情報をどの項目で管理するかを決める必要があります。 - 連携先によってはAPIが利用できない
APIを提供していないサービスへは、同じ方法では自動連携できません。 - 媒体ごとの細かな表現には工夫が必要
同じ元データを使っていても、WebサイトとSNSでは適した表現が異なる場合があります。 - 小規模な運用では費用対効果が合わないことがある
更新頻度が低く、媒体数も少ない場合は、手動更新の方がシンプルなこともあります。
重要なのは、「一元管理すれば必ず効率化できる」と考えないことです。
更新する情報の量、媒体の数、担当者、更新頻度などを見たうえで判断する必要があります。
まとめ
Webサイト、SNS、ネットショップなどに同じ情報を何度も入力することは、単なる作業量の問題ではありません。
情報が分散すると、更新漏れや情報の食い違い、属人化といった問題が起こります。
そこで、情報を一箇所で管理し、必要な媒体へ配信するという考え方があります。
APIは、その情報をシステム同士で受け渡すための重要な仕組みです。
そして本当に重要なのはAPIそのものではありません。
企業が持っている情報を整理し、「一度登録した情報を何度も使える状態」にすることです。
これは、Webサイトだけの話ではありません。
新しい媒体が登場しても、必要な情報をそこへ届けられるようにしておけば、情報発信の仕組みそのものを作り直す必要がなくなります。
「同じ情報を何度も入力している」
「媒体によって内容が違ってしまう」
「WebサイトやSNSの更新を一人の担当者に依存している」
もしこのような状態になっているのであれば、まずは情報そのものを整理するところから見直してみてください。
金風株式会社では、製品ありきではなく、現在の運用や情報の持ち方を確認したうえで、WebサイトやCMS、APIなどを組み合わせた情報配信の仕組みをご提案しています。