「Cloudflare(クラウドフレア)に移行すれば、ドメインもサーバーもメールもまとめて管理できる」
こうした話をSNSやブログで見かけることがあります。
Cloudflareは、実際に非常に優れたサービスです。
ただし、ここで一度整理しておきたいことがあります。
Cloudflareを導入することと、ドメイン・サーバー・メールをCloudflareだけで完結させることは、同じではありません。
Webサイトが表示されている裏側には、ドメイン、DNS、Webサーバー、メールサーバーなど、複数の仕組みがあります。
これらの役割を理解しないままDNSを移行すると、サイトは普通に表示されているのにメールだけ届かなくなる、といった事故が起こります。
この記事では、Cloudflareを導入するときに最低限知っておきたい、それぞれの役割と安全な移行の考え方を整理します。
まず、ドメイン・DNS・サーバー・メールを分けて考える
Cloudflareの話をする前に、Webサイトを構成しているものを分けて考えてみます。
| 仕組み | 役割 |
|---|---|
| ドメイン | 「example.com」のような住所 |
| DNS | その住所を、どのサーバーやサービスにつなぐかを指定する |
| Webサーバー | Webサイトのファイルやプログラムを動かす |
| メールサービス | メールを送受信する |
| Cloudflare | DNS、CDN、セキュリティなどを提供し、Webサイトの前段に置くことができる |
重要なのは、これらは同じものではないということです。
たとえば、CloudflareのDNSを使いながら、WebサイトはXserver、メールはMicrosoft 365という構成もできます。
「Cloudflareを使う=全部Cloudflareに移す」という話ではありません。
ここを理解するだけで、移行時の混乱はかなり減ります。
Cloudflareは何をしてくれるのか
Cloudflareは、Webサイトとインターネットの間に入るサービスとして利用できます。
特に代表的なのが次の機能です。
- DNS … ドメインと各サービスをつなぐ
- CDN … コンテンツを各地から配信する
- セキュリティ … 不正アクセスや大量アクセスへの対策
- SSL/TLS … HTTPS通信を支える
- 各種エッジサービス … Cloudflare Workersなどで処理を実行する
この範囲では、Cloudflareは非常に強力です。
しかも無料プランでも利用できる機能が多く、Webサイトの前段に導入する価値があります。
ただし、ここから先が重要です。
CloudflareがWebサイトの前段に入ったからといって、Webサイトそのものが消えるわけではありません。
Cloudflareを入れてもWordPressの実行環境は必要
WordPressを使っている場合、Cloudflareを導入してもWordPressそのものが動く環境は必要です。
WordPressはPHPやデータベースなどを利用して動作するためです。
そのため、一般的には次のような構成になります。
訪問者
↓
Cloudflare
↓
Webサーバー
↓
WordPress
↓
データベース
Cloudflareは、WordPressを動かしているサーバーの前段に置くことができます。
したがって、
「レンタルサーバーをCloudflareに置き換える」
という理解は正確ではありません。
WordPressをそのまま使うなら、別途その実行環境が必要です。
一方、HTMLなどの静的ファイルだけで構成されたサイトなら、Cloudflare Pagesなど別の構成を選択できます。
これはWordPressサイトにCloudflareを追加する話とは、別の設計です。
WordPressを使い続けるかどうか迷っている場合は、WordPressをやめるべきか?|他のCMS・静的サイトへの移行を迷ったときの判断基準もあわせてご覧ください。
メールはさらに別の仕組み
ここが移行時に最も注意したいところです。
たとえば、
Webサイト → Xserver
メール → Xserver
DNS → Cloudflare
という構成も普通に成立します。
DNSをCloudflareに移したからといって、メールまでCloudflareに移す必要はありません。
DNS上で、メールをどこで受け取るのかを正しく指定すればいいからです。
Cloudflareには現在、Email RoutingやEmail Serviceといったメール関連機能もあります。
Email Routingは受信メールを既存のメールアドレスなどへ転送する仕組みで、Email Serviceにはアプリケーションからトランザクションメールを送信する機能もあります。
ただし、これは一般的な企業メール環境やメールマガジン配信サービスを、そのままCloudflareに置き換えるという話ではありません。
Cloudflareの公式ドキュメントでも、Email Serviceはトランザクションメール用途とされ、マーケティングメールには現在対応していないと説明されています。
つまり、
「Cloudflareにメール機能がある」ことと、「現在使っているメール環境をCloudflareに置き換えられる」ことは別です。
一番怖いのは「サイトは表示されるのにメールだけ止まる」こと
Cloudflareへの移行で実務上怖いのは、サイトが完全に壊れることではありません。
むしろ、
サイトは普通に表示されているので、移行に成功したと思ってしまうこと
です。
DNSを変更するときには、Webサイトだけでなくメールに関するレコードも確認する必要があります。
特に確認したいのが、
- MX
- SPF
- DKIM
- DMARC
です。
Cloudflareの公式ドキュメントでも、メールの送受信やなりすまし対策のためにメール関連のDNSレコードを適切に設定する必要があると説明されています。
ここを移し忘れると、
- 問い合わせフォームのメールが届かない
- 会社宛てのメールが届かない
- メールを送った相手に届かない
- 迷惑メールに入りやすくなる
といった問題につながります。
しかもWebサイトは正常に表示されるため、原因に気づくまで時間がかかることがあります。
だからこそ、DNS移行ではWebだけでなくメールもセットで確認する必要があります。
Cloudflare Registrarにドメインを移すことも別の話
Cloudflareには、ドメインを登録・管理するCloudflare Registrarもあります。
レジストリへの原価に近い価格でドメインを管理できることを特徴としており、対応しているTLDでは魅力的な選択肢です。
ただし、すべてのドメインがCloudflare Registrarに対応しているわけではありません。
対応TLDはCloudflareが公開している一覧で確認する必要があります。
特に日本企業でよく使われる.jpや.co.jpを利用している場合は、Cloudflare Registrarへの移管を前提に考えないほうが安全です。
そもそもCloudflare Registrarで扱えるTLDかどうかを、移行前に確認してください。
また、Cloudflare Registrarを利用する場合はCloudflare DNSを利用する構成になります。
つまり、
「ドメインだけCloudflareに移す」
と考えていたものが、実際にはDNSの管理方法まで変わることがあります。
ここも事前確認が必要です。
ドメインやサーバーにかかる費用の考え方は、ホームページは公開してからいくらかかる?|5年間の維持費・保守費とCMS選びで整理しています。
Cloudflareを導入するべきケース
ここまで注意点を書きましたが、Cloudflareそのものを避ける必要はありません。
むしろ、目的が明確なら非常に有効です。
表示速度や配信を改善したい
CDNを利用することで、静的なコンテンツなどを利用者に近い場所から配信できます。
セキュリティを強化したい
Webサイトの前段にCloudflareを置くことで、攻撃や不正アクセスへの対策を強化できます。
DNSを柔軟に管理したい
複数のサービスやサーバーを利用している場合、DNSを一元管理できるメリットがあります。
複数のサービスを組み合わせたい
Webサイト、API、フォーム、別サーバーなどを組み合わせる場合にも、Cloudflareは便利な基盤になります。
重要なのは、
「Cloudflareを使うか」ではなく、「何のためにCloudflareを使うか」
です。
「1社にまとめる」と「1つの仕組みにまとめる」は違う
「ドメインもサーバーもメールも1社にまとめたい」という考え方にはメリットがあります。
契約先が少なくなり、問い合わせ先も分かりやすくなります。
ただし、管理をまとめることと、仕組みを1つにすることは別です。
たとえば、
ドメイン → レジストラ
DNS → Cloudflare
Web → レンタルサーバー
メール → Microsoft 365
フォーム → 別サービス
という構成でも、管理方法を整理しておけば十分運用できます。
むしろ重要なのは、
「何か問題が起きたとき、どこを確認すればいいのか分かること」
です。
サービスを1社に集約すること自体が悪いわけではありません。
ただ、「全部まとめれば簡単」という理由だけで移行するのはおすすめしません。
Cloudflareへの移行前に確認する3つの質問
誰かからCloudflareへの移行を勧められたら、最低限この3つを聞いてみてください。
① 何が問題で、Cloudflareの何が解決するのか?
「高速になる」「安全になる」だけでは不十分です。
現在の何が問題で、Cloudflareのどの機能によって、どう改善するのかを確認してください。
② メールはどうなるのか?
ここは必ず確認してください。
現在のメールサーバーはどこなのか。
MX、SPF、DKIM、DMARCはどうするのか。
問い合わせフォームの送信先は変わらないのか。
送受信テストはどのタイミングで行うのか。
ここまで説明できる提案なら、かなり安心できます。
③ 問題が起きたとき、元に戻せるのか?
DNS移行は「変更して終わり」ではありません。
問題が起きた場合に、どこを戻せば元の状態に戻るのかを確認しておきます。
移行前の設定を保存していない提案は、避けたほうがいいでしょう。
移行するなら、一気に全部変えない
安全に進めるなら、順番が重要です。
- 現在のDNSレコードを保存する
- Webサイトの接続先を確認する
- メールの接続先を確認する
- MX・SPF・DKIM・DMARCなどを確認する
- Cloudflare側に必要なDNS設定を作る
- DNSを切り替える
- Webサイトを確認する
- メールの送受信を確認する
- 問題がないことを確認してから追加機能を有効にする
一度にすべてを変更すると、問題が発生したときに原因を特定できません。
1つずつ変更し、1つずつ確認する。
これが移行作業では非常に重要です。
段階的に進めるという考え方は、移行以外の場面でも同じです。静的サイトとCMSを併用すると起きる「共通パーツのズレ」|二重管理をやめる方法でも、影響範囲の小さいものから改善した経緯を書いています。
Cloudflareは「移行するもの」ではなく「組み合わせるもの」と考える
Cloudflareへの移行という言葉を聞くと、現在のサーバーやドメインを全部Cloudflareへ移すように感じるかもしれません。
しかし、実際にはそうとは限りません。
Cloudflareは、現在のWeb環境に追加して使うという考え方もできます。
たとえば、
ドメイン
↓
Cloudflare DNS
↓
Webサーバー → WordPress
↓
メールサービス
のように、それぞれの役割に適したサービスを組み合わせることができます。
この考え方なら、「Cloudflareを使うか、使わないか」という二択にする必要もありません。
必要な部分だけCloudflareに任せる。
これも立派なサイト設計です。
まとめ
Cloudflareは非常に優れたサービスです。
ただし、Cloudflareを導入したからといって、ドメイン、DNS、Webサーバー、メールという別々の仕組みが1つになるわけではありません。
むしろ、Cloudflareを上手に使うためには、それぞれの役割を理解しておく必要があります。
特に注意したいのがメールです。
Webサイトが正常に表示されていても、DNSの設定を間違えればメールだけが止まることがあります。
だからこそ、
- 何をCloudflareに任せるのか
- Webサイトはどこで動かすのか
- メールはどこで送受信するのか
- DNSをどう設定するのか
- 問題が起きたとき、どう戻すのか
これを移行前に決めておくことが重要です。
「Cloudflareにしたほうがいい」と言われたから移行するのではなく、現在の構成のどこを改善したいのかから考えてください。
その結果、Cloudflareを導入しないほうがいい場合もあります。
逆に、Cloudflareを導入することで構成が大きく改善する場合もあります。
判断するためには、現在のドメイン、DNS、Webサーバー、メールの構成を一度整理するのが近道です。
Cloudflareへの移行を勧められているものの、何を変更するのか分からない。
WebサイトはそのままでDNSだけ移したい。
メールを止めずにサーバーやドメインの構成を見直したい。
そういった場合は、移行前の構成確認からご相談ください。
移行することが正解とは限りません。
現在の構成を確認したうえで、移行しないほうがよければ、そのようにお伝えします。